婀靈 (Arei)

白婀靈望篶(はくあれい みすず)

白い阿片の靈
阿片って実は、そんなに強くない。モルヒネのほうが、さらにそれを化学処理したヘロインのほうが強力である。

(シンボル:オリーブの枝(平和を実現する為には、時として戦争も必要)、鳩、月桂樹、ヤドリギ、ホワイトポピー(第一次世界大戦後、戦争を美化しない為、兵士、民間人を問わず、犠牲者をたたえる為に配られた、自殺防止))

復讐のシンボル:ブラックキャンドル、ブードゥー人形、さそり座、短剣(攻撃性が高い。他が全て失敗したときの、最後の手段。)、スカル、蛇、割れた鏡、烏、蜘蛛、赤いケシ(戦争による復讐)、黒猫、棺)

蒼き星と赤き星を繋げる存在。巫女と呼ばれる。
物語中では魁のこころの支えになると同時に、彼の視野を広げ大きく成長させる立役者ともなった存在である。
実年齢は624歳だが、怪奇なので外見はいまだに十代の少女そのもの。かつての人怪戦争で両親を殺され、拷問、強姦された挙句に捨てられたため、人間を心の底から憎むと同時に、再び孤独になることを心の底から恐れるようになった。

怪奇はその長命さによって実年齢をあまり正確に把握していない者も多いのだが、彼女は腐っても、巫女という紅き星にとって本来最も重要な立場の存在であるため、出生の段階まで遡ってしっかりと調べ上げられた記録が現在でも残っているようだ。

カイの前では明るく優しく面倒見は良いながらも芯があり、彼を諭し、導くこともある。(この優しさこそが本来のアリアの姿である)。
怪奇共からは普段は気にも留めない存在として扱われており、その困難がうかがえる。
カイからは優しく思いやりがあり、元気で面倒見がよく、自分に寄り添ってくれることもあれば叱ることもある、本当に自分のことを考えてくれている大切な存在だと思われている。

怪奇共の前ではなんでも言う事を聞き、すべてに従い、いつも笑顔を絶やさない。
しかし、実際には自分の気持ちを押し殺し続けている。カイの前でのみ本当の自分を曝け出している。

かつてのつらい経験からずっと孤独にならないようにすることを何よりも先に考えていたが、魁との生活の中で自分も周囲も大切にすることへと考え方が変わっていった。


他者からの呼ばれ方はアレイ、アリー、アレイちゃん、アレイさん、番人娘などなど。魁は単にアレイと呼ぶ(出会った当初にさん付けで呼ぼうとしたら「あたしのことは呼び捨てでいいよ」と笑いかけられたのと、ちゃんに関しては付けて呼ぶのが恥ずかしいらしい)。

肌の色は温かみのあるイエローベース、瞳はルビー色。髪はくしゅっとしたブロンズ色で、身長は魁よりも低い(というか、魁がすこし高すぎるのもあるのかもしれない)。背中の白い羽、草花が絡まったような左腕、痣のような模様のある半顔が特徴。怪奇なのに傷があると思われがちだが、これは生まれつきである。怪奇は基本的に「傷が残らない形で再生する」と言われるが、正確には「生まれたままの形に再生する」のである。
彼女のどこか憂いげな笑顔は、穏やかながらもどこか孤独や哀愁を漂わせる。
それもそのはずだ。現在ではほとんど誰にもまともに話を聞いてもらえない中、里を離れた湖畔の灯台でたったひとりで暮らしているのだから。

赤き星の大穴の番人をしている。

蒼き星(つまり人間)のメッセージやエネルギーを受け取る器となる存在。
基本的には受け取った事物は全て審神者(サニワ)に伝達し、審神者がその情報が赤き星にとって有効かどうか、論理的、思考的に解釈し、一般の怪奇共に分かる言葉で伝える。

これが本来の政(青き星の声を祭ること)であった。この政で築き上げられる文明は、巫女のメッセージを根源としているので、常に青き星と調和した文明となる。

しかし、ここ十数年で、審神者が圧倒的な力を持つようになった。青き星、つまりその支配者である人間からの独立を望んだ彼等は、政の根源である巫女のメッセージを切り離し、論理性を中心とした政治を行うようになった。
それにより築き上げられる文明は、徐々にエスカレートして青き星との調和を欠いた文明へと進んできている。
怪奇共と赤き星を愛するアリアは、何度も警告した。
このままでは、そもそもが人間を根底にして構築された怪奇共の社会は崩壊する。万一の場合、境界が壊れることもありえる。
しかし、審神者どもは一切聞く耳を持たなかった。お前に救いの手を差し伸べたのは我々だと、昔話を持ち出して、アリアを脅迫した。アリアも遂に抵抗できなくなり、ただただ漂着物を集めて審神者に渡し、人間が漂着したら殺して、報告をすることくらいしか出来なくなってしまった。
但し、彼女もただ黙っているわけではなかった。
恋をした怪奇共を守るため、水面下で、ある計画をひとりでに進めていたのだ。

しかし、彼女の不安は的中してしまう。
巫女を政から外してたった数年の内に、
赤き星が存在するということが、既に絶滅したと思われており、忘れ去られかけていた怪奇がまだ生きながらえているということが、エニグマに漏れてしまっていた。
エニグマは、朽ちた波に浸食され尽くすであろう蒼き星を捨て、赤き星を侵略し、今度こそ怪奇を絶滅させ、人類が支配する第二の監獄にしようと目論んでいたのだ。
この計画は秘匿されており、エニグマの中でも一部の役員しか知り得なかった。
その為、後百年足らずで人類が滅亡すると考えていた人間共にとって、エニグマが「人類の終活」を一切せず、むしろ人口増加を促進し、あらゆる保障を緩めなかったのはいささか疑問に思われていたのだ。

この「巫女」という役割は誰もができるものではない。
彼女は、それまでの体験と精神病を通して、精神世界、夢に干渉する能力を持っていたのだ。
逆に言えば、魁こそが青き星の神主なのかもしれない。

「私達は、もともとは何か他のものだったんだ。

初めはそれを覚えているけれど、それを次第に忘れてしまって、初めから今の形のものであったと思い込んでいるんじゃない?

怪奇に人間の心を植え付けたのは、他でもない。

人間よ。

私たちの中の人間の心がすっかり消えてしまえば、お互いを殺し合い、血にまみれ、そのほうが、余程しあわせになれたでしょう。

なのに。

それなのに。

私達は、人間の心を失うことが、この上なく怖い。

どんなに恐ろしく、悲しく、切なく思っているでしょう。

私たちが人間性を損失することを。
怪奇に人間の心を植え付けたのは、他でもない。

人間よ。

私たちの中の人間の心がすっかり消えてしまえば、お互いを殺し合い、血にまみれ、そのほうが、余程しあわせになれたでしょう。

なのに。

それなのに。

私達は、人間の心を失うことが、この上なく怖い。

どんなに恐ろしく、悲しく、切なく思っているでしょう。

私たちが人間性を損失することを。

記憶を失うことを。

大切なものを失うことを。

この気持ちは、私達にしかわからない。

お前たちには、絶対にわからない。」
記憶を失うことを。

大切なものを失うことを。

この気持ちは、私達にしかわからない。

お前たちには、絶対にわからない。」

「私は、おそろしい。

自分が、何故人間のような心を持っているのだろうと考えてしまうのが、おそろしい。」

「、、、カイ君、うちらはね、運命の主人になりたいんだ。

いつまでも、人任せではいられない。

いつまでも、子供のままではいられない。

いつまでも、運命の下僕のままではいられないのよ。

あんたは、どうする?」

「、、、私の代わり?いるよ、いくらでも。」

「迷える坊ちゃん、ようこそ、赤き星へ」

赤い星の大穴(青い星への門)を守る番人。
怪奇の少女。
人怪戦争によって両親を殺され、酷い拷問、強姦を受けた挙げ句に捨てられた過去があり、人間を心の底から憎んでいる。
しかし、それでもなお、怪奇の為を思い、自らの人間を憎む思いを押し殺し、人間と怪奇が共生する道を模索している、この上なく優しき少女である。
彼女は、赤き星と怪奇のことを、誰よりも深く愛し、恋している。
だからこそ、自分の感情を押し殺して計画に反対したとき、糾弾されたことに深く傷ついている。
赤い星の大穴は青い星に比べて小さく水が溜まっており、青い星の物や人間が浮かんだり漂着していないかを日々見回っている。怪奇は多くの場合空を飛べる。
また、大穴に近づこうとする者を追い返す役目も持つ。

人間を滅ぼした結果、怪奇側が危険を被ることを憂いている。

たゆまぬ努力によってその能力を維持し続けている。

だが、憎しみは自己弁護である。
憎しみを含まない表現は、美しい。純粋だ。
カイにとって、アリアの憎しみは大嫌いな不純そのものだった。
彼女の苦しさは、過去に囚われていることにも起因する。
たくましい人間は、過去に惑わされない。
けれど彼女は弱いから、悔いがいつまでも残り、それが拡大してゆき、ついには現在しなければならないこと(周囲に抵抗し、奴隷的な扱いから抜け出し、より良く生きること)をほっぽらかして、ひたすらに悔やんでいる。
自分自身を乗り越えるということは、己自身を忘れることだ。
自分自身を忘れることで、自分自身になりきる。
彼女には、それが出来なかった。

基本的に温和。面倒見が良く、他人を気遣い、寄り添える。
人間を、心の底から憎んでいる。
赤き星と怪奇のことを誰よりも愛していると言っても過言ではなく、本当に彼らの為になることは何か、どうすれば怪奇がこれからも存続していけるのかを考え、日々を過ごしている。
ただ、怪奇共に嫌われ、孤独になることを恐れるあまり、怪奇の前では常に本当の自分を隠し、好かれたままでいられるように取り繕い続けてきた。
怪奇共の願いは何でも聞き入れ、怪奇共が良いと思うように行動してきた。
そのため、怪奇共にとってのアリアは「こちらの言う事を聞くのは当たり前」という存在になっており、朽ちた波計画でアリアが珍しく反対したときには逆上し、「今なお人間に支配され続けている怪奇共の気持ちを何も考えていない」「それでもお前は怪奇か」とまで吐き捨てた。
これによってますます委縮してしまったアリアは、遂に一切自分の意見を言わず、怪奇共に指示されるがままに行動するようになった。
誰にも本当の自分を曝け出せず、辛さと悲しさと悔しさにおしつぶされそうな毎日だった。
つまり、怪奇の域に収まらない、赤き星の社会から(ついでに言えば青き星の社会からも)外れているカイは、アリアにとって、「本当の自分」を吐き出すことのできる数少ない相手だったのだ。
彼になら、自分の本当の気持ちを伝えることができる。
本当のわたしを、理解してもらえる。
アリアにとって、本当の自分を押し殺し、ただただ傀儡のように働くことは、日常生活そのものであり、それが当たり前になっていた。
いつしか、「本当の自分を押し殺している」ということすら忘れていた。
しかし、二人と出会って生活を共にする内、番人になってからずっと辛い気持ちを隠し、自分に「これが当たり前」と嘘をついてきていたことに気づいた。
それにより、何時ぶりに怪奇に対して疑いの目を向けるようになった。
怪奇を信じることが出来ない自分自身を責めたが、すぐにカイが静止し、「アリアはそのままでいい。」と伝えた。
アリアの中で、カイの存在はどんどん大きなものになっていった。